東京高等裁判所 昭和30年(ネ)2193号・昭30年(ネ)2232号 判決
本件建物が小林重雄の所有であつたこと、右建物について被控訴人のため参加人主張のとおり(一)昭和二十五年三月十四日売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記並びに(二)昭和二十八年八月二十六日その本登記がなされたこと、右仮登記は当初は被控訴人の小林に対する金三十万円の債権を担保するため建物を譲渡したことを原因とするものであるが右債務は結局完済せられたから、右仮登記の本来の目的は消滅したこと、しかし、右債務の割賦弁済金二回分計四万円が残存していた昭和二十七年三月頃、被控訴人が小林に五十万円宛二回に計百万円を貸与し、譲渡担保となつている本件建物をもつてその債務をも担保することとし、前記仮登記をこれに流用することを合意したこと、右百万円の支払がなされなかつたため、右仮登記に基き本登記がなされたことの事実認定は、さきに、控訴人の被控訴人に対する請求について説明したとおりである。そして、右の仮登記は本件建物を右金三十万円の債務を担保するため譲渡したことによるものであるから当時仮登記に表示されているような所有権移転請求権は存在していなかつたものであるし、仮登記がなされたのは前記のとおり昭和二十五年三月十四日であるのに、右金百万円の債務の譲渡担保としたのは前記のとおり昭和二十七年三月頃のことであつて、その間二年程の期間があるから、仮登記とその原因とは全く相違していること、またもしこのような仮登記の流用について順位保全の効力を認めることになれば、一旦なされた仮登記は当事者の合意さえあれば限りなく他の権利の仮登記について流用し順位保全の効力を有することになり不当な結果を生ずるので、右の仮登記は右金百万円の債務の譲渡担保については順位保全の効力を有しないものと解するのが相当である。従つて、後に説明するように、代物弁済が否認されることになれば、百万円の債務の譲渡担保としての所有権移転の効力は破産財団に対しては対抗力を有しないものといわなければならない。
(薄根 村木 元岡)